税務調査とは?
税務調査は、事業を行っている方が嫌いな言葉の一つではないかと思います。名前は知っている方、税務調査を受けたことがある方はたくさんいらっしゃると思いますが、法的に税務調査がどのようなものかをご存じの方は少ないと思います。参考にご覧下さい。
税務調査の法的根拠
税務調査については、所得税法、法人税法、相続税法、消費税法などで定められています。
「税務署の職員は・・・・・・・必要があるときは・・・・・・質問し又はその帳簿書類その他の物件を検査することができる。(抜粋)」
引用:国税庁/第1章 法第74条の2~法第74条の6関係(質問検査権)
よく問題になる事項
- 必要があるとき
どういう場合に必要があるのかが問題になります。調査官には調査理由の開示をしてもらわなければなりません。
しかし、調査官に調査理由を尋ねても「長期未接触だから」「所得の確認のため」など適切な返答はありません。
私の知り合いの税理士には、調査理由だけで半日もめる方もいらっしゃいます(それはちょっとやりすぎですが・・・)。ただ、向こうの都合だけで調査に来られるのも困ります。 - 質問し又はその帳簿書類その他の物件
この文章の意味は非常に大きいです。「帳簿書類その他の物件」です。「帳簿書類その他物件」ではありません。
法律用語においては、「その他」と「その他の」の両者は意味が大きく異なります。
「A、Bその他C」では、AとBはCに含まれず、AとBとCは並列な関係です。
上記の文章が「帳簿書類その他物件」であれば「物件」に「帳簿書類」は含まれないこととなります。つまり、帳簿書類以外のものも検査することができることになります。
一方「A、Bその他のC」では、AとBはCに含まれ、Cの代表例としてA、Bを挙げていることになります。
上記の文章は「帳簿書類その他の物件」ですので「帳簿書類」は「物件」の例示であり、言葉の意味としては「帳簿書類」に類似するものしか検査することができないということです。
この違いが大きいのは分かりますか?
「その他物件」であればある意味なんでも検査ができることとなります。法律では「その他の物件」ですので、帳簿書類に類似するもの(請求書や領収証など)しか検査はできません。
つまり「金庫を見せてほしい」とか「引き出しの中を見せてほしい」というのは断ることができるんです。(もちろん調査に必要な理由があれば見せなければなりません)。
税務調査は、任意調査です。日程が合わなければ変更してもらうことはできます。しかし、税務調査の拒否をすることはできません。法律でこのように規定しているからです。
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。引用:国税庁/法人特別税法
- 税務職員の質問に対し答弁せず若しくは偽りの答弁をし、又は検査を拒み、妨げ若しくは忌避した者。
- 検査に関し偽りの記載又は記録をした帳簿書類を提示した者」(消費税法では上記「一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金」は「十万円以下の罰金」)
つまり税務調査は、任意調査といいながら法的拘束力のある一種の強制調査です。
最近の税務調査事情
最近の税務調査は、非常に法律(納税者の権利)を無視した税務調査が行われています。
それは、なぜか??
それは税務調査について、税理士も税務職員もよく分かっていないからです。
税理士の事情
税理士試験では税務調査について教えてくれません。税務調査については自分で勉強する。先輩の税理士にそのノウハウを教えてもらう。そのくらいしか方法はないのです。
今、事務所に勤務している税理士は日常業務に追われ、そのような勉強をする時間はありません。その結果、開業していざ税務調査を受ける機会ができても、どうすればよいか分からないのです。
税務職員の事情
税務署では、昔は先輩から後輩に税務調査のノウハウを教えるという仕組みがありました。仕事のやり方、帳簿で怪しいところを見分ける勘、納税者との話し方のコツ、そういうものは仕事が終わってから先輩と飲みに行って教えてもらう、そういう風習がありました。
しかし、今の時代は先輩と飲みに行く後輩はほとんどいないらしいです。
つまり、データのみの調査になってしまい、調査でやって良いこと、やってはいけないことなどはさらさら分かっていないのが現状です。
つまり、税務調査の分からない税務署の職員が調査に来て、税務調査の受け方の分からない税理士が調査に立ち会って、税務調査が行われている。
そのような調査なので、何となく、なあなあで調査が進められ、なんか知らないけどお金を払って調査が終了する。とんでもない税務調査が行われています。
調査にはルールがあります。法的なルールではありませんが、最高裁で出された判例というルールがあります。そのルールから外れた調査は違法調査なので、調査の拒否をすることも可能です。
何も喧嘩をするわけではありません。正しいことは正しいというだけです。適正に事業を行っている善良な国民に対し、犯罪者のような調査をするということがあってはならないというだけです。
国民の権利を主張していくことが必要です。
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